フレスコ画と漆喰

フレスコ画と漆喰

フレスコ画と漆喰

イタリア絵画で有名なフレスコ画と、日本の伝統的左官材料である漆喰(しっくい)は同じ材料であることをご存知でしたか?

イタリア絵画の傑作「フレスコ画」

システィーナ礼拝堂の「天地創造」そして「最後の審判」。フレスコ画の代表的な傑作です。見ているだけで圧倒される。言葉を失う。そういった人も少なくないことでしょう。それほどの迫力と美しさ、あるいは、作るのにかかった気が遠くなるほどの構想と苦労と時間と労力、それを本能的に感じ取り、圧倒されるのかもしれません。

フレスコ画とキリスト教と

Assisi

もともと、フレスコ画というのは、ルネッサンス初期に花開きました。なぜ、フレスコ画が、花開いたのか? それは、ルネッサンス初期のキリスト教の変化にその起源があります。キリスト教では、教典というものが存在していたため、その内容を教えるために、教える階級として司教がありました。彼らは、教典の内容を深く理解してもらうために、「絵」というイメージを利用していましたが、それまでモザイクタイルによる絵で行われていました。それを変えたのがアッシジの聖フランチェスコでした。

彼は、ルネッサンス初期に、お金がある上流階級だけでなく、貧しい庶民にももっとキリスト教を伝えなければならない。そこで、豪奢なモザイクタイルによる絵ではなく、壁面に、それまであった漆喰という材料に油と顔料を混ぜることにより、壁画を作成する、という質素なフレスコ画を考えたわけです。それをきっかけに、ルネッサンス期、フレスコ画による壁画が花開き、ミケランジェロの「天地創造」などに結実していきます。

日本にもある漆喰文化

思えば、日本にも漆喰の文化は古くから存在し、今もなお、むしろ今では高級な左官の壁仕上げとして存在しています。漆喰という材料は、下地作りから始まって、中塗り、上塗りという段階を経て、仕上げられますが、下地や中塗りの水のひき具合、季節による気温、材料の質等、色が白の場合でも色むらやヒビ割れをおこさないように、非常に気を使って仕上げられていく材料です。

それに例えば顔料を加えて、色付けを行うとなると、さらに気を遣います。こっちの壁とあっちの壁で色が違っていたり、色むらが出ていたりしたら、施主さんから何て言われるでしょうか? 自らの仕事として、左官屋さんは、消石灰と顔料の配合比率、つまり材料作りから非常に神経を使って仕事を仕上げていきます。

失敗の許されないフレスコ画

ひるがえって、フレスコ画です。一旦塗って、乾いてから、仕上がりの色が分かってくるという世界で、一度その色が違ったら剥がさなければやり直せない世界の中で、しかも剥がしてもうまく継ぎ目が補えるかわからない、つまり失敗が許されない世界の中で、あれだけの色使いと構想で実現されるフレスコ画。あれだけの絵を描き上げるために、おそらく先人からの気が遠くなるほど積み重ねられたであろう試行錯誤とその苦労と労力を想像するだけでも、しばし頭の中は呆然としてしまいます。

東京でのフレスコ画は、ジブリ美術館の天井画が有名ですね。また、漆喰を使った壁画、ということでは、最も古いものでは、高松塚古墳が有名です。フレスコ画、という漆喰を使った絵と、イタリアと日本のつながりに思いを馳せるいい機会になるかもしれません。(村越幹弘)

株式会社TNS代表取締役: 村越幹弘

村越幹弘

1974年、東京都生まれ。都立西高校、中央大学法学部卒業。その後、東京大学大学院にて国際法を専攻し、法学修士を取得。1999年オリックス株式会社に入社。宇都宮支店で3年間の法人営業を担当後、投資銀行本部にて債権買取・証券化・M&Aの業務に携わる。2005年3月末に同社を退職。株式会社TO THE NEXT STAGEを友人と立ち上げ、現在、株式会社TO THE NEXT STAGE 代表取締役、同時に家業の太平建材株式会社取締役としても活躍中。